遠隔観測・制御・温水消雪実証実験

 新潟県の長岡市民からの問い合わせで、長岡市で提案する遠隔自動操作の実証実験を行うことになりました。

 

 長岡市在住の駐車場のオーナーからの問い合わせで、「2022年12月19日の大雪で発生した市内の車の渋滞を体験して自動制御できるならば自宅から4㎞離れた所有する駐車場の確認と、融雪装置のOn/Offを行いたい。」とのことでした。

 駐車場オーナーは、天気予報の情報を基に降雪時には、朝4時~6時の間に駐車場の状況を確認に行くそうです。雪センサーを用いた自動融雪装置が既に設置されていますが、降雪時には必ず目視観察を実施しているそうです。年20回ほどの出動日となりますが、4時、11時、15時と3回の程度の巡回を行い、駐車場が降雪で覆われない様に巡回しているそうです。2022年12月19日の38年振りの大雪では、朝4時巡回時には安全に帰宅できたものの、11時の巡回時に降雪遭難にあい、他の車同様に渋滞にはまり、4㎞先の駐車場から帰宅に6時間かかったそうです。

 オーナーも後期高齢者となり、「できるのであれば、自宅から駐車場を観察し、融雪装置も遠隔操作でOn/Offしたい。」とのことでした。オーナーの加盟する駐車場管理会社では同様の問題を抱える駐車場が多数あり、この問題を解決できると多くの人が助かる。とのことでした。

 

 そこで、実証試験として、参加させていただくことにしました。結果については随時ホームページでアップロードしたいと思います。


 降雪後の長岡市の様子です。毎年このような状況になります。天候が良ければ1週間以内に通常の生活にもどるそうです。歩道から道路にはみ出した雪はブロワー型の除雪機で歩道に積み重ねるか、ダンプを用いて全数排雪搬送の必要があります。新潟より以北の各県、新潟・長岡・富山の山間部や田圃と接する道路でも排雪搬送が行われています。日本国内の排雪搬送の市場規模は450億程度(全体の30%程度)ですが、土木産業用のトラックが減っている事。作業員が高齢化している事。作業単価が低く事業化が難しい。生活拠点の密集化による排雪場所の確保問題。などが理由で地域によっては上手く除排雪できていない問題があります。

降雪後の長岡市の様子
降雪後の長岡市の様子

 長岡市に多数ある自動融雪装置の駐車場です。毎年降雪70㎝を越える長岡市ですが、さすがに1日に100㎝を越えた2022年12月19日の大雪では、融雪装置の能力が降雪速度に間に合わなかったようです。が、さすが除雪インフラが充実している長岡市です。降雪後、ニ、三日でかなり移動ができるようになり、1週間後には、ほぼ全域で移動が可能になったそうです。私が現地調査に入った2022年12月29日~2023年1月2日の間は問題なく市内の移動が可能になっていました。

 

 長岡市は地盤沈下を防ぐために厳しい融雪散水の制限があります。融雪散水による地盤沈下があまり発生していない地域として富山県があります。富山県以外は著しい地盤沈下の発生が観測されています。地域ごとの地盤によって運用方法が大きく異なるようです。

 

融雪設備が完備した駐車場
融雪設備が完備した駐車場

 下記に、手動で切り替える配電盤を示します。手動融雪・自動融雪の2つのモードがあり、モード切替は手動で行うようです。自動融雪では、降雪センサーのOn/Offに合わせて駐車場が自動融雪されのですが、現状の降雪センサーは、積雪の有無しか判定できないため、大雪時の積雪であろうと、通常の積雪であろうと、スイッチがOnされるので積雪の有無は問題ではないが、大雪であっても融水量が変わらないことに問題があるそうです。結局のところ大雪の時は、人間が目視で融雪量を調整して散水し、融雪完了後に直ぐに散水を停止する必要があるそうです。特に最大融雪量で散水する場合冠水が発生しない様に監視する必要がありますが、そのような機能がまだ普及していないとのことでした。水位計などを取り付けることで冠水を回避して最大融雪量で散水することが可能と思われますが、既存の装置は非常に高価な装置のため、既設のまま、改造なしに遠隔操作および自動制御ができたら嬉しい。との技術課題要求でした。

融雪散水穴
融雪散水穴
手動切替の配電盤
手動切替の配電盤

 既設の自動融雪装置と降雪センサーを用いれば駐車場の融雪が可能です。70㎝以上の降雪があった場合は、自動制御から手動制御に切り替え、大量の融雪を短時間に供給する必要があります。排水状況に合わせて冠水が危惧される場合には、融雪を停止する必要があります。そのため、オーナーは降雪時には、吹雪いていようが、氷点下であろうが、一日に何度も巡回作業を強いられています。


 長岡市にはそのような丁寧な管理が必要な駐車場が沢山あり、それを取りまとめる地場企業が数社あります。それら企業に参加・加入している駐車場の実際の管理者である駐車場のオーナーが高齢化しており、自動化できると大変助かる。とのことでした。本研究室は、地域のための高専教育の観点から実証実験に参加させて頂いています。

 本研究室では数千㎞離れた国外から遠隔観察・操作可能な小型制御システムを構築・開発することができました。その装置の応用として自宅から屋外に設置されている。既存の制御盤に取り付けられている制御切替スイッチを遠隔操作で切替えることができます。
 追加工や改造が必要無いため、既存の手動設備を改造なしに安価で自動化することで可能です。既存販売されている自宅周辺用の90°回転式の遠隔装置では、回転角度が狭く利用できないなどの問題があったため、任意角度に回転操作が可能な遠隔動作スイッチも製作しました。