富山県内の道路用ライブカメラ

 富山県は元々道路用のライブカメラの充実した県であったが、2019-2020年頃からIoTの有効活用が県・市で検討されており、2020-2021年豪雪をきっかけに急速にライブカメラが充実配置されている。県のHPに特設サイトが設営されており、県民はスマホおよびPCから気軽に積雪情報を得る事が既に出来ている。

 

富山県冬期道路情報 -地図- (toyama-douro.toyama.toyama.jp) メニューより各災害情報に移動可能。
富山県冬期道路情報 -道路カメラ一覧- (toyama-douro.toyama.toyama.jp)
 自身の知りたい道路状況をカメラ情報で確認可能

 

 この経済効果は非常に大きいものと考えられる。県内では3年に1回のペースで通行止めおよび通行止めに準ずる渋滞が発生する様な降雪災害が発生している。富山県内の降雪渋滞によって、1日の渋滞で約100億の県内総生産、10億程度の税収減が発生する。1シーズンで言えば、大雪に見舞われた年は、東証1部上場の企業の売り上げに相当する様な県内総生産のダメージが発生している。

 そのため、早期の道路インフラの復旧が求められるが、通勤時の自動車や路上駐車の影響によって、効率良く除雪を行えない問題があった。カメラインフラの充実化によって、通勤移動の時間をずらしたり、在宅勤務に切り替える、個別の休校判断を行うなど、柔軟で多種多様な意思決定が行うことが可能となる。他県に比べ、富山県の除雪設備に関する環境は大きくレベルが上がり、新たな局面に進化したと思われる。

 このデジタルトランスフォーメーション:DXによって、県民の個々のスマホと、情報発信者が、Cloud上で情報をリンク・共有することで、新たな社会価値および生活スタイルの変化が創出されるようになった。今後、除排雪に関して、国指導によって実証実験されている自働排雪搬送重機の導入・活用など更なる高効率化が期待される。

 国交省・県・市への聞き取り調査によれば、富山県は、長く国・県・市が情報を共有して公的除雪を実施してきたため、積雪災害に強い県となっている。除雪距離で言えば、市道の除雪距離が長く、また細々とした実際の市民生活と一番親密度が高いことが分かっている。そのため、毎月発刊される「市政だより」による雑誌媒体の情報発信も効果が大きい。2021年11月20日号では、トップ記事として除排雪に関する情報が紹介されている。個別地域への除雪機の除雪機の貸し出しや、排雪費用の支援方法など、生活に直結する情報が記載されている。

 公的機関の対応先の電話情報も記載されているが、1日の問い合わせ件数が1,000件を越えるため、繋がらに状況が続いている。今後電話など市民からの対応の高効率化・改善が求められる。と考えられる。それらを顧慮すると、時代背景の変化に合わせ、Web、ラジオ、ケーブルテレビニュースなどリアルタイム情報共有が効率的と思われる、合わせて今後、雑誌へのQRコード記載などによる県やテレビ局所有のライブカメラ情報へのリンク紹介が期待される。

 


冬季の道路における脱輪・スタック状況について

 冬季の積雪による自動車の脱輪およびスタックを富山県の地図上にマッピングし、過去に遡って、何度もスタックが繰り返される場所を定量的に特定し、その場所近傍に遠隔積雪モニターを設置し、ネット上でその情報をリアルタイム共有することにより、交通渋滞の緩和などを目的とした研究を実施したいと考えた。この情報の広報、ネット、テレビ、ラジオを介した公開による公益の波及効果は非常に大きい。技術的には簡単な方法であるが、自動車のスタックに関する統計データは、個人ブログ等から抽出する場合には情報が不正確なこともあり、外部の支援が必要と考えている。

 

 冬季の積雪による自動車の脱輪・スタックの状況について調査したところ。唯一JAF様がその大まかな情報を持っていることが分かった。JAF様に連絡を取ったところ、「公益として、外部への情報提供については乗り気である。が、1日当たりの出動件数が数百件にもおよび1カ月となると膨大な量の救助出動データとなっている。データはあるものの抽出に関するデータサイエンス技術が無いという問題を抱えている。」とのことであった。本研究室から、PythonおよびExcelを用いたAI-OCR自動抽出プログラムなどの支援を行いたいが、「個人情報を取り扱う案件のため、外部の人がデータを触ることが出来ない状況である。」とのことであった。JAFとしては、スタック情報の公開の重要性を承知しているが、外部共有するにも慎重な判断が迫られる情報であり、共有が難しいとのことであった。汎用AI-OCRソフトを導入して、統計データのデジタル化、共有化が行われることが望まれる。

 

 降雪時におけるスタックおよび渋滞に関する課題は、技術も情報もあるが、個別に保持しているため、広域地域連携という観点で問題を含んでいる。国土交通省・県庁・市庁の関係各所に働きかけて、他の方法も含めオール富山で対策をとる必要がある。これについて、現在衛星情報を用いて過去に遡って車の移動の停滞などを評価する方法がないか模索中である。各省庁にスタック発生時に関する衛星情報の管理に関する聞き取りを行ったところ、国土交通省・県庁・市庁から保持していないとの返答をいただいた。富山県内で衛星写真とAIを活用した地域の政策は実施されていない。富山市の方でセンサーネットワークを利活用した実証実験が行われており、それら団体との行政の成果に期待したい。また、県庁では寄せられたスタック情報を保管しているが紙媒体のためデジタルデータ化が行われていない。との返答があった。富山県では各省庁におけるAI-OCRの普及が遅れている。中小企業においてAI-OCRなどの開発を行える企業が沢山あるが、それら企業と連携して、地域の地力の向上を促がして欲しいと思っている。

 

 また、自動車会社へも問い合わせを行った。道路交通に関する高速道路以外の国道などの道路の交通障害情報のデジタル配信では、トヨタ自動車様が、数年前からデジタル情報に関する配信を実装しており、ネットから参照することができるhttps://www.toyota.co.jp/jpn/auto/passable_route/map/。トヨタ自動車様では、コネクティッドカーから収集した大量の車両データの統計処理から、新し情報発信を挑んでいる。今後、道路に関する事だけでなく、その延長線も含め、生活の安心・安全に関する情報を公開されると思われる。既に色々な事を考慮されているとのことであるが、本研究室からは、除雪のスタック情報に関して、調査間隔をもっと細かくし、情報提供して頂くようお願いした。

  

 なお、降雪時のスタック発生研究に関してはアメリカ陸軍の研究が1990年代頃まで何編か報告されている程度である。国内では、新潟県、福井県で力を入れており、その中でも福井大学の藤本先生が科学的な計測手法で定量的にスタック発生条件に関する独創的な研究を実施し、新しい科学的知見が多数得られている。