後期高齢者社会に与える小型除雪重機の導入効果


 以下に示す除雪作業は降雪災害に対応するものです。元々除雪作業は重労働かつ危険な作業です。それを承知の上で安全を確保しながら小型重機を用いた試験を実施しています。重機による身体の損傷は一生治りません。重機を利用した除雪の効率化を定量計測していますが、重機を用いた除雪を薦めている訳ではありません。可能であれば業者への除雪委託をお願いします。
 このホームページで得られた情報をもとに各自が除雪作業を行い怪我等の身体の損傷が発生したとしても一切責任を負いません。よろしくお願いします。
 除雪の二次災害は家族の共倒れを発生させる非常に波及効果の大きい事故になります。非常に困難な屋根雪堀や庭先私道の簡単な除雪で多くの事故が発生しており、その後家族共倒れにつながっています。非常に致傷率が高い労働災害です。「無理をしない。一人でやらない除雪作業。」でお願いします。


研究背景

 富山県の報告によれば、2020年時点で富山県内で、1,300の限界集落が存在することが知られている。特に富山県は面積の7割が中山間地域であり、この1,300の限界集落は中山間地域に分散して存在している特色がある。また、人口構成があまり変わらないことから、2030年頃には、これら1,300の限界集落は、後期高齢者限界集落になることが予測されている。

 

 筆者の2009年頃からの長期にわたる高齢者除雪に関する研究の結果、60代の初期高齢者は自力で人手除雪を行うことができるが、73、74歳を超える後期高齢者になると殆どの高齢者が自力で除雪を行うことが困難になることが感じられた。実際徒歩による観察によると、人力で除雪を行っていた初期高齢者が、ロータリー式の小型エンジン式除雪機を使用する場面が多く観察されるようになった。

 

 研究を開始した2009年頃は市民除雪がメインとなる大型重機の入ることの出来ない細い道の除雪も住民自らが人力で除雪を実施していたため、自動車が容易に通れる様な状況であったが、2020年頃には、除雪放棄によって通行が困難な市民生活に関する道路が多数みられるようになった。研究を開始した2009年頃から、富山市は3,000㎞にわたる市道の除雪を実施しているが、慢性的に設備と人手が足りない状況であった。これに加え、市民が高齢化し、除雪放棄した市道が増えている。と、感じている。各個人は市に電話を行い除雪を要求すると思われるが、既に除雪能力を越えた要望がある。

 

 2030年頃には、多くの市民が後期高齢者になるため、さらに私的除雪放棄の道路が増えることが考えられる。設備、人員、予算の関係から公的除雪を私的除雪に適用することは困難である事が考えられる。一方、数十軒単位の散居村的な住居群が長い歴史を経て形成されているため、それら集落が各自で責任をもって除雪を強靭強化すれば、この困難な新規課題を克服できる可能性があると思われた。

 

 既に存在する地域クラスターという財産を活用化する方が効率の良い小規模私的除雪が実施可能であると思われた。どの程度の小型重機が必要で、どの様な問題が発生するか、実際に除雪を行ってみて問題を洗い出す実験を行っている。

 


小型除雪機の走破性試験

 特殊な免許が必要無く地域の私的除雪を支援できる小型除雪機を用いてどの程度の除雪が行えるかを検討した。

 

 2023年の1月24日~1月29日にかけて、富山市の実験地でも積雪がありました。例年より積雪は少なく、積雪深さは20cm程度でした。下記の野外実験地で、小型除雪重機の走破性試験を行いました。

 

 下の地図上で赤線で示す、130m長さ、2~3m幅、高さ0.2mの柔らかい轍を対象に、轍を完全に削り取れるか除雪を実施しました。紫色で示した道路は、57m長さ、2~3m幅、高さ0.2mの車によって圧雪された硬い轍区間です。硬く圧雪された轍を完全に削り取れるか除雪実験しました。

 

 試験に用いた小型除雪機は、「KIORITZ KSG 804S」です。予め湿り気の多い雪の除雪に有効な機種をYouTubeで検索をかけて得ました。得らえた情報では、特殊な免許を必要としない市民除雪には、取り扱い商品では、「オーレック 小型除雪機 スノークリーン SGW804S」と「ワドー スノーブレード SB692H」の2種類が有効とのことでした。どちらも馬力が大きく3.0PS以上の動力を持っていることがポイントでした(商社情報として、北陸の湿った雪では、KIORITZ株式会社、やまびこジャパン株式会社、フジイコーポレーション株式会社、和同産業株式会社などの製品が作業効率が高いとのこと。)。それ以下の動力の場合は、湿り気の多い雪の除雪には向いていないことが、多く報告されていたので選定から除外しました。また、セル起動式として後期高齢者でもエンジンを起動できる装置を選定しました。電気除雪機は実際の降雪サイクルに合わせて充電が完了しないので選定から外しました。

 

 実際、学校の取引先の除雪機械を専門に扱う商社を通すと、「KIORITZ KSG 804S」という同等品であれば納入できるという事でした。また、事前に入手した情報の通り、富山の湿り気の多い除雪の場合、ユーザーの想定より大きな馬力が必要で、対応する機材は除雪専門の商社か、それと同等の農機具専門店を通さないと手に入らないということが分かりました。

 

 除雪専門の商社によると、3.0PS以下の除雪機は個人宅の駐車場の除雪を想定して設計されており、手回しが非常に良いが、10台以上の駐車場などには力が足りない。広い範囲を除雪するのであれば、それにあった想定設計された除雪機が必要とのことでした。

 

 2022年9月の予約でしたが、2022年の1月に北海道で大雪が発生影響で、除雪機械を買い求める人が多く、生産が受注に間に合わない。という状況と、コロナ禍の影響で海外からの部品が入らない。等の問題がありましたが、何とか2022年の11月に納品されました。除雪機は完全予約生産のため、直ぐに欲しいと思っても手に入らない特徴があり、計画的な購入計画が必要とされる設備です。

 

以下に示す除雪作業は降雪災害に対応するものです。元々除雪作業は重労働かつ危険な作業です。それを承知の上で安全を確保しながら小型重機を用いた試験を実施しています。重機による身体の損傷は一生治りません。重機を利用した除雪の効率化を定量計測していますが、重機を用いた除雪を薦めている訳ではありません。可能であれば業者への除雪委託をお願いします。
 このホームページで得られた情報をもとに各自が除雪作業を行い怪我等の身体の損傷が発生したとしても一切責任を負いません。よろしくお願いします。
 除雪の二次災害は家族の共倒れを発生させる非常に波及効果の大きい事故になります。非常に困難な屋根雪堀や庭先私道の簡単な除雪で多くの事故が発生しており、その後家族共倒れにつながっています。非常に致傷率が高い労働災害です。「無理をしない。一人でやらない除雪作業。」でお願いします。


 下の図は除雪前の柔らかい雪質の轍です。新聞配達用の軽自動車が往復で2回通った程度で、ほぼ新雪で20~25㎝積もった状況でした。130m長さ、2~3m幅、高さ0.2mの柔らかい轍を完全に削り取れるか除雪を実施しました。作業時間は20分程度でした。

 

 除雪作業は危険を伴います。作業者の装備として、重機に踏まれても足指がもげない様に、つま先に鉄板が入ったゴム長靴と、ヒートショック対策と動きやすさから、最新の防寒具を用いて実施しました。

 

 

 小型除雪機は、「押す機能」はありません。除雪機が進行しながら、除雪機前面にある積雪を横に除けながら進んでいく構造になります。ここら辺が大型重機との大きな違いで、横に除けた雪がある程度溜まると、それを更に側面奥に移動させるため、ブロワー式の除雪機で投雪作業が必要になってきます。

 

 大型重機だと、道路側面に溜まった雪を持ち上げ、更に奥に積むことができますが、使用した装置はそのような機能はありません。排雪場所が確保できない場合は、積雪を上げ下げできる機能を持った大型除雪機の導入が必要です。が、免許が必要なため個人では対応できず、業者に任せることになります。

 

 

 上図の様にプラウ板に雪を受け、側面に流す様に除雪機は前方に進んでいきます。下図に示す様に3.0PS以上の小型除雪機は相当な積雪高さでも、無理なく雪を除けながら進んでいきます。除雪を行ってみて、「疲れが無い。」、「人手では無理な範囲の除雪が楽にできる。」というのが一番の感想でした。

 

 

 下図は除雪後の道路の様子です。やわらかい轍の場合、2往復で車が通れる道ができました。130m長さ、2~3m幅、高さ0.2mの柔らかい轍の除雪は、約500m長さ、幅0.65mの作業時間が20分程度でした。

 

 野外観測において小型のブロワー型除雪機で除雪する方法が多く見られますが、個人向けのブロワー型除雪機は使いようによっては除雪作業効率を低下させます。「プラウ型除雪で雪を集積してから遠くに飛ばす。」という方法が時間的に効率が良いと思われます。その様な2つの機能を持った除雪機も販売されています。時間効率の良い除排雪には、プラウ機能とブロワー機能の二つが必要だからです。が、個人で操作するには使用が怖いほどの大きさです。

 

 因みに、公的除雪において、大型トラックにプラウ板を取り付けた除雪機や、バケットが複雑に複動動作する大型ホイールローダーが多いのは、ブロワー除雪よりも、プラウ除雪が圧倒的に時間効率が良いからです。ただし、集積した雪を排雪するとなると、ブロワー除雪機と多数のダンプトラック無しに効率を上げることができません。プロが行う公的除雪では、高効率化のために除雪機を棲み分けて利用しているようです。

 


以下に示す除雪作業は降雪災害に対応するものです。元々除雪作業は重労働かつ危険な作業です。それを承知の上で安全を確保しながら小型重機を用いた試験を実施しています。重機による身体の損傷は一生治りません。重機を利用した除雪の効率化を定量計測していますが、重機を用いた除雪を薦めている訳ではありません。可能であれば業者への除雪委託をお願いします。
 このホームページで得られた情報をもとに各自が除雪作業を行い怪我等の身体の損傷が発生したとしても一切責任を負いません。よろしくお願いします。
 除雪の二次災害は家族の共倒れを発生させる非常に波及効果の大きい事故になります。非常に困難な屋根雪堀や庭先私道の簡単な除雪で多くの事故が発生しており、その後家族共倒れにつながっています。非常に致傷率が高い労働災害です。「無理をしない。一人でやらない除雪作業。」でお願いします。

 

 続いて、下図に示す様な、57m長さ、2~3m幅、高さ0.2mの車によって圧雪された硬い轍を完全に削り取れるか除雪実験しました。結果として用いた除雪機では能力が足りず、圧雪で硬くなった轍を完全に除去することができませんでした。

 

 ただし、アスファルト面を露出させない雪上の摩擦係数が小さい条件での除雪作業のため装置性能が十分に発揮されなかったことが考えられ、今後圧雪粉砕に関する追試験を実施予定です。

 

 

 硬い轍のため、プラウ板前面に除雪を受けることができません。プラウ面の全面に除雪を受けると除雪機の重量が軽すぎて、タイヤが空回りします。この装置の除雪機能の限界の様です。プラウ面の一部を使って少しずつ硬い轍を削り取っていきます。

 

 

 下図の様に完全に圧雪した轍を使用した機材では削り取ることができませんでした。が、轍の高低差を低減することができました。この程度に轍の高低差を低減できれば、車が停車後に、スリップしたとしても前に走りだすことができます。人手による轍の高低差の低減に比べ、短時間で広い範囲の轍高低差の低減化が可能であり、市民生活における自動車の立往生解消に効果的と思われました。今後追実験が必要と思われます。

 完全に圧雪された氷の様に硬い雪をアスファルトから剥がすことはできませんが、硬くなった轍の高低差を低減できることが分かりました。短時間に発生た豪雪対応の市民除雪としては有効と思われます。特に免許が必要無い事、軽トラックや、軽バンの後ろに積んで長い距離を移動できる。ガソリンがあれば直ぐに動くこと。大型重機の入れない車と車の間、路地をすり抜けて移動ができること。時間が掛かりますが、何度も少しずつ削る事で圧雪された道を整路できる。などの利点があります。

 

 因みに実験した1月29日の次の日の1月30日の朝には、コマツおよび日立建機の除雪専用の大型重機で圧雪された轍が完全に除雪されていました。使用した機材で20分かけても削り取ることの出来なかった圧雪路面を数秒で整路できる重機ですが、大型免許と、大型特殊免許が必要です。今回使用した機材の馬力に比べて、大型重機の馬力は30倍大きく、価格も50-70倍と高価です。一般市民には手がでません。自分で出来ない除雪ならば、専門業者に頼むのも有効な手段です。

 

以下に示す除雪作業は降雪災害に対応するものです。元々除雪作業は重労働かつ危険な作業です。それを承知の上で安全を確保しながら小型重機を用いた試験を実施しています。重機による身体の損傷は一生治りません。重機を利用した除雪の効率化を定量計測していますが、重機を用いた除雪を薦めている訳ではありません。可能であれば業者への除雪委託をお願いします。
 このホームページで得られた情報をもとに各自が除雪作業を行い怪我等の身体の損傷が発生したとしても一切責任を負いません。よろしくお願いします。
 除雪の二次災害は家族の共倒れを発生させる非常に波及効果の大きい事故になります。非常に困難な屋根雪堀や庭先私道の簡単な除雪で多くの事故が発生しており、その後家族共倒れにつながっています。非常に致傷率が高い労働災害です。「無理をしない。一人でやらない除雪作業。」でお願いします。


個人向けの遠隔操作および自動運転除雪機の開発

 除雪機械を使うとどうしても人間が機械の周りに存在することになる。デッドマンクラッチなどの安全装置がついていても実際除雪を行ってみると、寒い中、体を連続して動かして、集中が切れてくると、自分でバック操作した機械のハンドルに腹を打つなどのヒヤリハットが多くある。そのため、重機を用いた除雪作業は30分が限界と思っています。

 本研究室では、数百キロ先からロボットを遠隔操作できる技術を持っており、除雪機械を遠隔操作する機械を開発しようと思っています。現行の除雪機も数m離れた所からプロポで操作できるようになっても良いと思っています。降雪災害対応でおきる重機を用いた致傷事故による二次災害は家族共倒れを招く波及効果の大きい非常に重要な社会課題です。2030年頃には日本国全域が後期高齢者限界都市化しますので、その前に何か対応を打てないかと検討しているところです。

 後期高齢者社会の除雪問題に関しての先進研究は、文献調査を行うと、北海道大学を中心としたグループと、長岡技術科学大学を中心としたグループ、防災研(京都大)・福井県・福井大学を中心としたグループの3つの拠点グループを中心として協力しながら、20年ぐらい前から検討していますが、後期高齢者の除雪問題に関する研究者が少ないと状況は変わっていません。

 富山県でも北陸地域で後期高齢者除雪問題が顕著化してきて、報道数が年々増えています。本研究室も北陸地域のためになる様な研究を目指して頑張っています。

 2020以前から工業用のロボットが世界中で働いている。特に建設現場では、かなりの重労働が遠隔操作重機や無人自動運転重機に置き換わっている。2022年には除雪の様な多様な対応が求められる複雑な作業も遠隔操作されるようになった。

 

 そこで、本研究室でもAIや遠隔操作技術を用いた個人除雪向けの遠隔操作および自動運転除雪機を開発しようと思っている。既に公的除雪機での無人化自動化は目途がついているので、近日中に色々な所で無人自動化除雪ロボットが活躍すると思っています。が、個人向けの無人自動除雪ロボットは、日本やアメリカで先行して発表されているが、まだまだ、数が少なく、一般に出回っていないかもね。

 

 日本では、「ゆき太郎」という画像AIを用いた無人自動除雪機が既に2006年頃に発表されている。そのアイディアは今でも褪せることがない。かなり完璧な考えだと思う。2020年代の今でも通用するAI技術が搭載されていることから、当時の超最先端研究の成果だったと思われる。十数年たった今、画像AIが私の様な他分野から移ってきた研究室でも実現可能なほど、膨大な技術資料を手に入れることができたり、周辺デバイス価格が低下したことで、居色々な挑戦的な研究が行えるようになってきた。

 

 そこで周回遅れではあるが、個人向けの無人自動運転除雪機械の開発を2023年から開始する予定です。といっても、かなり前から資料を取り寄せて、基盤技術を準備してきたので、他の研究室と成果が重ならないことを願いつつの後発開発となる。さて、どこまでうまく行くものか?

 


地域適用に向けた問題点

 小型重機を用いた実験において地域住民が人手除雪を行っている中、実験を行うこと自体が肩身が狭かったです。非常に効率の良い設備であり、貸し出したいぐらいなのですが、「貸して欲しい。」、「貸してあげる。」という意思表示と意思の共有が難しい状況です。

 

 というのも私の実験フィールドは、一度、高齢化が進み過ぎて、住民が著しく減少し、その後に区画整備によって新しく住民が増えた地域です。昔からあったであろう住民の横繋がりという絆があまりないようです。逆にいうと新しく移り住んできた人から見ると、住みやすい。とも言えます。結果として、共助除雪に必要な横繋がりという絆が、再形成されていない状況です。

 

 観察結果や、住民から聞き取り調査によると、小学校に入ると、子供を介しての横繋がりが初めて始まる。とのことでした。小学校インフラ、町内会インフラの双方に過大な負荷なく、相互効果を生み出すような市民関係を構築する様な試みが地域の生き残りにつながると感じました。地域に適用する場合に既に富山市で行われていますが、「共有設備の貸し借りの簡易化」の市民による強化が強くなることを期待します。