家前の通常除雪の費用は4208円/時、屋根雪下ろし費用は7529円/時間、排雪費用は搬送トラックの大きさに関わらず7520円/杯となっている。
個人向けの除排雪費用について調査を実施した。調査方法はWeb検索からトップ50位に入った企業のホームページに記載されている価格から調査を実施した。
全国の除排雪費用の調査では、上位にランクインする除雪施工会社は、北海道の札幌市に存在する企業が殆どであり、北海道以外の地域のデータが検索上位に入ることは少なかった。全国検索では、容易に上位50社の企業を検索することができた。検索結果から、抽出された会社は、除雪専門の企業というよりは、土木、建築、園芸関係の重機を持っている企業が、冬場の仕事として実施しているようである。北海道では、排雪業務が仕事として市民に認識されていることが、他の地域との違いと思われた。因みに札幌市の除排雪市場は年間200億円程度と報告されている。その幾らかは、戸宅除雪として中小企業が受け持つことになる。
検索結果が主に札幌市の費用価格しか集まらないことから、除排雪全国費用の平均は、札幌市の平均費用と捉えている。家前の通常除雪の費用は4208円/時、屋根雪下ろし費用は7529円/時間、排雪費用は搬送トラックの大きさに関わらず7520円/杯となっている。屋根雪下ろし費用は危険を伴うため、必ず2名以上つけるという業者が大半である。屋根雪下ろしが必要な時期は、緊急車両が通れないことが容易に想像される。無理な作業が地域全体の医療に大きな影響を与える事が考えられるため、施工業者は社会的な責任を認識しながら、事業を展開する心構えが必要である。
富山県における除排雪費用の平均は、家前の通常除雪の費用は6733円/時、屋根雪下ろし費用は7750円/時間、排雪費用は搬送トラックの大きさに関わらず11833円/杯となっている。
続いて、富山県における除排雪費用について調査を行った。まず、富山県における除排雪に関する企業が圧倒的に少ない。Web検索数が全体で100件を下回っており、その中から、除排雪費用の記載があったHPは9件となっている。除排雪という仕事が富山県では認識・評価されていない。そのためか、除雪費用を請求すると、「高額である!。」とか、「お金を請求するとは何事か!」と、怒鳴られたというトラブルがあったなどの記事の記載も見られた。
また、富山県外の遠隔地の企業がWeb上で取りまとめを行い、富山県内の企業に仕事を割り振るというようなビジネスもみられた。除排雪事業は地域共生の事業であり、身近な事業者が実施することが一番効率が良いため、各市町村単位での取りまとめ役が発生することが望ましい。
富山県における除排雪費用の平均は、家前の通常除雪の費用は6733円/時、屋根雪下ろし費用は7750円/時間、排雪費用は搬送トラックの大きさに関わらず11833円/杯となっている。屋根の雪下ろし費用については、全国(札幌市)平均と殆ど変わりないが、家前の除雪および排雪費用が全国平均に比べて高い。
屋根の雪下ろし費用が全国的にあまり差が発生しない理由は、重機を利用しない人力による除雪が一般的であり、重機減価償却費用の上積みが発生しないため、全国的に費用差が生じなかったと考えられる。また、富山県内における一般的な家周りの除雪費用および排雪費用が高い理由として、富山県における除排雪企業が少ない事、除排雪の必要性が北海道に比べて圧倒的に少ない事があげられる。除排雪の必要性が無いので、重機機材の作業回数当たりの単価を下げる事ができない。除排雪企業が少ないため価格競争が起きないなどの問題を抱えている。
富山県および全国の除排雪費用の平均値を調べた。この結果が除雪業者に頼る場合のおおよその目安となり、費用トラブルが発生しないことを願う。
富山県の公的除雪は、国道、県道、市道ともに非常に合理的で安価に実施できています。研究調査を長く行っている筆者からすると、「他の地域に比べて安価過ぎて、今後のインフラ維持が行えないレベルではないか?」と、危惧するぐらい安価です。
他の人が書かれたWebページ「富山の除雪費用っていくら?1日4,000万円の実態に迫る。」(https://www.freenavi.co.jp/article/13861)に記載のように富山県内の公的除雪は、富山市、高岡市ともに1日4,000万円程度です。
統計資料の比較から、富山県内の除雪は、地域の人口・産業規模や、税収から見ると、降雪他県に比べ、かなり安く抑えられています。他の県の30%弱位に予算が抑えられている理由の一つは、他県に比べて融雪の先行投資があり、かなりの距離を除雪しなくて良い事が考えられます。
富山県内でも富山市管轄で3,100㎞、県管轄で2,400㎞の道路が除雪されています(2019年国土交通省、県庁、市庁との調査会議より)。かなりの距離が融雪されているため、予算を低減で来ていると考えれます。が、最近では融雪設備の敷設(ふせつ)から50年経過し、配管老朽化のための再敷設、定期的な吸い上げポンプの更新費用などが、空き家増加、地域住民の減少によって、十分に行えない地域が出てきました。人口減少、高齢化、税収削減といろいろな問題が複合的に重なっているのが近年の除雪社会課題と認識されています。
長年調査を行っている中で、県や市で設営した排雪場で大雪の年でなくとも、毎年個人で排雪作業を行っている人を見かける。また、地域の協力排雪場場で排雪作業を行っている人を見かける。山間部の地域では落雪型の住宅も少数あり、落雪後の排雪作業をどうしても必要としている人もいるようだ。
それに対して市は、除雪および排雪装置を貸し出しするなどの対策を行っており、市広報誌などを介して毎年情報提供をおこなっている。これは更に高度化すると更に効果的な事業に展開できると思っている。さらに広く展開してもらいたいと期待している。
また、色々な団体が、ボランティアを募集した活動を行っている。が、私の調査によれば、そのような対策は長続きしないし、社会全体に負の効果をもたらす。 啓蒙活動としての除雪は素晴らしく、ボランティアの気持ちは非常にありがたく受けとらなければならないが、俯瞰的な立場から状況を確認、再考して、もう一工夫必要な点がある。
長続きする計画と、長続きしない計画の差はどんなことがあるのだろうか?私的調査によれば、「社会的責任を負うという認識がある人が除雪作業やその企画を実施しているかどうか。」ということが大きく影響している。除排雪はボランティア精神だけではできない重労働であり、かつ、降雪災害復旧対応である。社会的責任があるという認識を持つ必要がある。一時的なボランティア活動は、活動経費が無いため継続できない場合が多い。
後期高齢・人口減少社会が先行する福井県の山間部での調査結果によれば、ボランティア活動は長続きしないため、極力実施せず、継続できる事業者を育成することが地域の生き残り政策であることを述べている。
長続きして成功した地域はどのような地域かというと、市町村が認定除雪作業会社を公表して、おおよその施工費用を提示し、その後は利用者と施工会社の間で話が進むという例である。施工会社と住民の間で問題が発生すれば認定を取り消しされるため、価格・施工の質のトラブルが回避できる。富山県内で言うと、砺波市や上市町で、そのような事を行っているようである。行政的には長期的に市町村が生き残るためにも、確りとした予算立てが必要であり、全国平均規模の1時間4200~6700円/時の対価を支払う仕組みつくりが必要である。
ボランティアに頼るという無責任な計画は、地域に除雪はボランティア活動だという負の思想を与え、結果して地域に除雪活動が根付かず、皆が困るという社会問題に発展する。「対価を支払っているのだから、責任をもって除雪してもらう。」という風潮に切り替える事が地域が長く生き残る一工夫・智恵と思われる。また、初期高齢者が後期高齢者となり、物理的に若手高齢者によるボランティア活動が継続できない状態に陥っている地域も見られる。継続性の観点から、労働者としてのボランティア活動から、計画立案・管理のボランティア活動への切り替えなど、継続性を計画する段階に来ていると感じている。
インターネットを介して、電話やメール一本で除雪作業員を呼ぶことができるようになっている。既に価格競争が進みつつある。マイケル・E・ポーターが述べる様に、インターネット競争が進むにつれて、個人除雪の価格低下競争が過激化すると考えられる([新版]競争戦略論Ⅰ、Ⅱ、ダイヤモンド社。)。
防災・インフラの観点からこの流れが過激化する前に、市町村は規制を与え、過度の価格低下を抑える必要が迫られる。インフラ事業の低価格化は地域の死滅化につながる。上記著書に示す様に、誰も得を得られないゲームシナリオに落ち込む。 除雪インフラに関するインターネットの普及、AIの普及は市民生活を豊かにしない点があるので、一律インターネットやAIの普及が地方を救うという考えは当てはまらないと、気づくべきである。…既に遅いかもしれないが、…。
2022年現在、地域の冬季市民生活を維持できるか、それとも消える地方となるかの瀬戸際である。2042年までの令和第一次人口減少に耐えうる地方となるために、ボランティア参入、または、ネットを介した価格競争による継続性のない価格評価となる前に、除雪費用に規制を入れる事が望まれる。
富山県には、兵站学に長けた大企業と経済連合会・同友会があるため、比較的人口減少の影響を受け難い対策が長期的に実施されている。が、調査の結果さらに戦略優位になるために欠けている点も見られるようになってきた。それについては、本校の授業の質疑、または出前講座で説明を行いたい。
高齢化した地域・人口減少した地域での除雪作業が急に困難化してきている。20年以上前、高齢者の屋根雪下ろしの事故が増大し始めたころから、未来予測、統計データの調査、屋根の雪下ろし対策全般の研究、研究成果の地域還元としての雪下ろし作業に関する国のガイドラインの策定を行っている研究チームが実は日本にある。
屋根上雪の除雪を業者委託を頼むのに固定ハシゴ、アンカーというものが必要となる。墜落防止用のフルハーネス利用資格を持った除排雪業者でも困難な作業となる。命を最低限守るために、固定ハシゴ、アンカーが施工されていない家の除排雪は断られる可能性がある。固定ハシゴと、アンカーの普及は、山間部の高齢者社会における除排雪を救う一歩となると考えられる。
雪下ろし全般に興味がある方は、長岡技術科学大学、上村教授の研究成果を参考にされたい。「雪下ろしの死亡事故の半分が梯子からの転落」という非常に手間のかかる統計調査データの社会に還元する影響は非常に大きい。今後のどのように対策されるのか研究の展開に大きな興味がある。
雪氷工学研究室 | トップ (nagaokaut.ac.jp)
2009年頃から高齢者除雪に関する野外観察を行ってきたが、屋根の雪下ろし作業を目視できたのは、2021年の1月の1m積雪になった大雪のとき1回のみである。2009年、2014年、2022年の大雪のときには屋根雪下ろしは見たことがない。富山県内では、下記図に示すような、降雪が止まり、積雪が融雪し始めてから雪庇(せっぴ)がよく観察される。
国内では、雪庇雪下ろしの専門補助具(三協アルミ 雪下ろし棒 おっとせい)等が販売されており、既に屋根に上って雪を下ろす必要がない。地面から直接に家やカーポートの雪庇を落とすことができる。あえて商品名を上げたのは、先端が大きくカーブしており、雪庇が直接作業者に掛からない工夫がされている商品であり、他の直線的な雪下ろし棒に比べ、作業者の行動を考慮した設計となっており、死亡事故を防ぐのに非常に効果のある補助具として活躍されると思われたからである。雪下ろし先端部に大きなカーブが付いている商品はこの商品一択である。羽根の方向が90度違う方向についているタイプがあっても良いと思っている。
2021年、2022年豪雪では、屋根上に1.7mを越える様な積雪が多くの地域で観察されたが、倒壊した建物は空き家のみであり、人が住んでいる建物が倒壊したという報道はない。屋根上の雪下ろしは極力行わなくてもよく、雪庇の雪下ろしを安全に行うことが住宅環境を快適に過ごす社会システム、SDGs No.11「 住み続けられるまちづくりを」の構築に重要であると思われる。が、2022年豪雪では、色々な地域で1.7m積雪で老朽化した住宅が倒壊し数名死亡したとの報告がある。老朽化した住宅では雪下ろしがひつようである。しかし、巻き込まれた住民たちは、体が不自由であったり、高齢化して単独の除雪が行えない人ばかりであった。このような状況が今後急増すると考えられる。
山間の住宅では生活熱によって屋根と接する雪がとけ下方に流れ凍り付き”溜まり”と呼ばれる大きな氷の塊で出来た雪庇が形成される。富山県内では、砺波、南砺、立山、黒部、八尾の山間部でしか殆ど見れない。この対応として、冬前に窓ガラスが割れない様にベニヤ板等を複数壁に設置するなどの対策が必要である。
この氷の塊でできた雪庇は安易に近寄ってはいけない。数十キロの氷の塊が屋根上から落ちてくる。この雪庇の除去は難しく、専門業者でも嫌がる。南砺、砺波では個人で取り除かれるという話であるが、後期高齢者に成ったらどうだろうか?誰がこのような雪庇をとるのだろうか?